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President,s Column | エバー代表のコラム

あり得ることではない、今回の事件。

2015年11月

今回の旭化成グループのマンション不正問題について、建築の現場にいる側から解説したいと思います。

どうも最近のマスコミというのは作為的ですね。食いつきのよいネタや真相の一部分しか取り上げることをせず、国民の不安を煽ります。リアルな建築関係者が参加し真相を掘り下げる真摯な報道番組があったならいいのですが、芸能人的な出演者は皆が一様に「ひどい話ですね〜」「恐いですね〜」と表層だけを捉えてばかりです。あげくには、磨りガラスで顔が見えない匿名の現場監督が「今回のような失態はよくあることなんです」のようなことを言っていました。今やヤラセは御法度ですからそいつはまさしく悪徳建築業者です。そういう人間もいるのかもしれません。しかし、そのような例外的な人物を典型的な人物のように置き換えたような映像は、あたかも大半が不正をしているように見えて、作為的です。ほとんどの視聴者が「やっぱり日常茶飯事なんだ、ああ恐ろしい…」と思うでしょう。
しかし、今回の件は「異例中の異例」であると私は断言します。私の同級生に「杭屋」がいます。経験豊富な杭打ちの職人です。今回の件について感想を聞いてみたところ、答えは「あり得ることではない!まず考えられない!」ということでした。私とまったくの同意見です。

基本的な話からさせていただきます。
杭というのは地盤の強固な面(支持層)まで到達させます。しかし一般的には契約前の土地に対して具体的な杭打ち調査というのは行うことができません。まだ他人が所有する土地なのでそれは当然です。そこで、業界には近隣の地盤データというものが存在します。地盤というのは極小の面積で変位するものではなく、ある一定の範囲では一様に適用されるものなので、周囲の複数のデータを複合的に分析すれば、該当する土地のおおよその地質を推測することができます。その推測はほぼ正確で、今までずっとそのやり方で、どのくらいの長さのどういった性質の杭が必要になってくるのかがその段階で把握できていました。
そうした準備を行って後、土地を購入し、そこで初めて該当する土地の本地盤調査が行えます。おおかたは、近隣のデータから推測したものと合致するわけですが、そうではなく、事前の推測と本地盤のデータの食い違う場合も時にあります。例えば「周囲から想定したデータよりもこの場所は例外的に支持層が深かった」ということが判明したりします。そのような場合は、施主にその事情を説明し、資材を新たに調達して、想定より深く杭打ちをする必要があります。そのための工期の遅れというのは、やむを得ないものとして理解していただくほかありません。

ちなみにエバーの場合は、その理由ある遅延を報告することは、お施主様には多少のスケジュール的なご迷惑をかけることにはなっても、それを隠蔽などする必要はありません。杭打ちにタイムラグが生じても、なるべく施工遅延の起きぬようスタッフや職人が連携を取り合っていけばいいだけの話ですから。
しかしこれが複数の上下組織と多くの人数、そして遅れを許さない次の現場を抱えている事情の場合、それは正直な気持ちとして、現場監督に同情をせざるを得ません。仮に杭打ちで1週間遅れるだけであったとしても、その後の多くの職人のスケジュールを組み直すことを考えれば、それはへたをすると2〜3カ月、完成を送らせることになります。そうなると、親会社にとっても、数多くのマンション購入者にとっても、施工にまつわる関係各社にとっても、果ては関連企業の株主にとっても、芳しいことではないでしょう。
今回の件の真相が、そのようなことに起因しているのだとしたら、もちろん悪いのは当の現場監督ですが、同時に、その人物だけを責めたら事は済むのかと言ったら、それは違うと思うのです。やったことは確かに重大であり、今回の件は人災です。
しかし、このような人災は、当事者の我々が聞いたことがないほどに希有です。友人の杭打ち屋曰く「あり得ない」くらいに。なので、テレビや新聞で騒ぎ立てるほどに心配する必要はないと、私は思います。

マスコミはやたらに「データの流用」に焦点を当てています。しかし、問われるべきはこのように「データの流用」ではないのです。「データの流用」だけを探し出して不正建築を洗い出したら終わり、ということではありません。なぜ当の現場監督がそのような失態を起こしてしまったのか、その原因を追及することだと私は考えます。これは、現場に携わる多くの建築関係者が、一様に感じているはずです。

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