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President,s Column | エバー代表のコラム

仕事を奪うのは人間。それを救うのも人間。

2019年2月

ワールドカップで日本のサポーターが試合後にごみを拾うのを見て、海外では「さすが日本人は民度が高い」「素晴らしい国民性だ」と話題になりました。しかしその一方で、「スタジアムの掃除の仕事を奪う行為だ」と揶揄する人もいました。それはどちらも正しくて、日本人のそれは本当に良い行いだと思いますが、いざ実際に世界中のサポーターが試合後にごみ拾いを始めたら、掃除人の仕事はなくなってしまいます。雇用の喪失です。立場によってはして欲しくない行為に思えます。面白いですね。

そんな風にして、世界というのは、腑に落ちない人間の行いの数々によって雇用が守られている、とも言えます。コンビニの弁当は一定時間が過ぎると廃棄されるという非常にもったいないサイクルで動いています。だからといってそのサイクルを断ち切ってしまうと、多くのお弁当の生産者が職を失います。人間は、職を失ったからといって何もしないでいいという生き物ではありません。健康であれば働く義務があるのですから、何か新しい仕事に就かないといけません。腑に落ちない人間の行いを断ち切るのは人間ですが、そのことで職を失った人間の受け皿を考えなければならないのも、また人間です。

技術の進歩でどんどん既存の職が失われていきます。かつては駅に切符切りの鉄道職員さんがいましたが、自動改札の普及で今や皆無です。今はまだスーパーにレジのお姉さんがいますが、セルフレジは間違いなく彼女たちの存在を消滅させます。切符切りの鉄道職員さんがどこかで異なる仕事に勤しんでいるように、レジのお姉さんもいつか異なる仕事に勤しむのでしょう。ロボットがどんどん人間の仕事を減らしているのではなく、減らしているのは人間です。そしてそのことであぶれた人々を違う職場に動かすのも人間です。そうやって時代は繰り返されていきます。

怖いのは、その行く末が二極化の方向に向かってしまうことだと思います。つまり、人間の労働は、どんどん、管理する側と単純労働をする側の二方向に分かれていってしまうことです。それは察するに、勝ち組か負け組かみたいなことかもしれません。期待したいのは、その入れ替えがあるかどうかです。勝ち組はいつまでも勝ち組であるわけではなく、負け組はいつまでも負け組でない、緊張と希望のどちらもある社会になっていければいいのではないかと思います。